人権エッセイ集

2022年度 あいどるとおく

9月号「わたしと全人教大会」

わたしが新任の時、先輩教員が「一緒に石川行かへんか?」と誘ってくれた。それは第59回全国人権・同和教育研究大会(石川大会)だった。石川県に到着し、全体会会場に入ると、とにかく人が多くて圧倒された。こんなにも人権教育を学ぼうとしている人がいるんだ、と思った。

初めて参加して学ぶことは多かったが、特に印象的だったのが帰りのバスで先輩教員が、わたしにこの2日間の感想を「読んでおいて」と渡されたことだった。その用紙には、研究大会で学んだことはもちろん、わたしとの会話で気づき考えられたことが書かれていた。「子どもたちや保護者から学ぶ」という報告はよく耳にするが、「真に人から学ぶこと」を教わったように思う。

それ以降、全人教大会には、「なんとか分科会で自分の実践を明らかにして、意見を言いたい」と思って参加した。ようやく最近になって分科会で発言ができるようになった。しかし、第71回全国人権・同和教育研究大会(三重大会)の分科会では、発言することができなかった。それは、その分科会でのあるレポートが、この全人教大会に向けてより充実した報告内容となるように、いろんな視点で練り上げられ完成されたもののように思えたからだ。「すごい実践だな…」という感想しか出てこなかった。

報告内容を「絶賛」する発言が続く中、フロアから「報告者がAに生き方をみつめさせたかったとありましたが、報告者自身は自分の人生をどのようにみつめているのか。」という質問をされた。「自分は今まで差別とであってこなかった。」と、報告者は答えた。その後の討議から、「報告者は『差別がみえていなかっただけ』」ということが明らかになった。さらに「Aさんとであわなかったら、あなたは在日朝鮮人差別に気づかなかったということですか。今まで差別に気づかなかった自分って一体何だろうと考えたことはありますか。」という厳しい指摘がなされた。わたしたち自身の取組をふりかえると同時に、わたしたち教員自身の生き方をみつめ直すことの大切さを学んだ。

わたしにとって全人教大会は、「新たな視点に気づくことができる」場となっている。新任の時に教わった「学び続ける」ということを自身に問い続けて、今年度の全人教奈良大会もすべての参加者にとって実り多いものとなればと思う。

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