人権エッセイ集

2000年度 などちゃんのアイドルトーク 01

10月号「メッセージは地球をまわる」

今年の9月は、オリンピックにわきました。日本人選手の活躍はもちろん、外国人選手の人間の力の極限にまで至る挑戦が、多くの人々に感動を与えました。同時に、メダルには届かなくとも、力の限り競技に参加する選手の姿に胸を打たれた方も少なからずおられたことでしょう。

このオリンピックに関して、二つのことについて述べたいと思います。

まずは、開会式のセレモニーについてです。

今回は、オーストラリアの歴史で構成されていました。先住民であるアボリジニと移住者であるヨーロッパの人々との間で繰り広げられた歴史が全世界に発信されました。

このセレモニーのテーマを一言で言うならば、「共生」という言葉がふさわしいのではないでしょうか?

オリンピックのセレモニーは、開催国にとって大変重要なものです。かつて、ナチスドイツがベルリン大会の開会式を宣伝に使ったのは有名な事実です。

オーストラリアは、1980年ごろから政府の人権委員会が人権教育推進に力を注いできた国として知られています。「わたし、あなた、そしてみんな」(国際理解教育・資料情報センター発行)等の人権教育テキストが、多数紹介されています。こうした人権教育の取り組みがあってこそ、今回のオリンピックにおけるセレモニーが生み出されたのだと思いました。

さて、2008年のオリンピックが、もし大阪で開催されるとしたら‥。どのようなメッセージを大阪から発信するのか、日本の人権状況が試されると思います。

次に、選手が発信するメッセージです。

前回のアトランタで、あるマラソン選手が「初めて自分を褒めたい」と語って話題になりました。今大会でも、「自分としては精一杯できて満足です」「母にこの金メダルをプレゼントしたい」など、「自分らしさ」を強調したメッセージが相次ぎました。

「自分らしさ」を表現する(できる)ことは、人権の確立が一歩進んだことを意味していると思います。かつて、「国の威信」というプレッシャーに負けて自分の力を出しきれなかった選手が多かったことを思えば、日本人選手の意識はもとより、それを支える日本社会の意識の変化を強く感じる大会でもありました。

20世紀最後の年に開催されたシドニーオリンピックは、先に述べた二つの他にも、大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国の選手たちが統一旗を掲げて入場行進をしたことなど、21世紀に「人権と共生」の社会を実現しようとする熱いメッセージを全世界に発信したものと言えるのではないでしょうか。

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