人権エッセイ集

2007年度 アイドルトーク 02

5月号「順序よく」

気象庁は3月1日、この冬の日本の平均気温が平年を1.52度上回り、統計を開始した1899年以降で最高だった1949年と並ぶ、第1位の高い記録となったと発表しました。この記録的な暖冬は、二酸化炭素などの温室効果ガスの増加による地球温暖化の影響があるとみられますが、主な要因は北極付近の寒気が南下しにくい大気の状態が持続したことと、「エルニーニョ現象」の影響により、冬型の気圧配置が現れにくかったことの二つが重なったためと考えられています。

そういえば、季節の移り変わりを知らせる「春一番」も例年よりもかなり早く、2月中旬に吹きました。特に東京では、一度も雪が降らないまま「春一番」が吹いたことがニュースになりました。都内で初雪よりも先に「春一番」が吹いたのは、気象観測史上初めてのできごとだそうです。その後、東京では平年よりも 73日も遅く、3月16日にやっと初雪が降りました。季節の順序が違っています。

さて、本年4月24日、全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)が実施されました。教育の成果と課題を検証し、今後の教育政策に反映させるためだと言われていますが、このテストの実施以前に教育再生会議からは「授業時数の10パーセント増加」などの改革の方向が示されていました。順序はこれでよかったのでしょうか。また、「将来に向かって、新しい時代の教育の基本理念を明示する(内閣総理大臣談話)」新しい教育基本法が昨年12月22日に公布・施行されましたが、日本の将来を指し示すべき「憲法」の改定についてはまだ議論が続いています。こちらの順序はどうでしょうか。

ところで、日本の冬は気象学的には12月から翌年2月までとされていて、東京の初雪は冬に間に合わず、観測史上初の「雪のない冬」となったそうです。東京の、とりわけ永田町の上空には順序を乱す風が吹いているのでしょうか。

目次