人権エッセイ集

2016年度 あいどるとおく

9月号「あつい夏」

8月、暑くて熱い夏となりました。連日の猛暑が続く中、熱中症で救急搬送された方が一日で1000人を超え、重症化して命を落とされた方も少なくありませんでした。亡くなられた方々に、心より哀悼の意を表します。
 

さて、熱い夏と言えば、リオ・オリンピックでは日本選手の大活躍がありました。連日、新聞の一面を飾る日本選手の記事。テレビでも、深夜から早朝にかけてのLIVE放送に加え、ハイライト番組も数多く放送されました。日本選手をはじめ、各国の選手の活躍に胸を熱くし、時には選手の頑張りに涙することもありました。奈良県出身の選手の活躍には、特に感動しました。
 

一方で、気になることもありました。あるメダリストが「これで日本に帰れる。」と述べ、メダルを逃した選手が「皆の応援に応えることができず、申し訳ない」とコメントしたことです。私たちの意識の中に、そして日本社会に、「結果を示さないと意味がない、過程より何かを生み出さないと意味がない」といった結果だけを求めたり、時には排除したりする考え方が空気のように漂っていて、想像を超える努力を重ねた選手に、先のようなコメントをさせていないでしょうか。
 

また、こうした考え方が、相模原市の「障害者」施設を襲い、19名にも及ぶ尊い命を奪った容疑者と繋がっていないかということです。「障害者」は生きる価値がないかのような容疑者の考え方に、「その考え方は、間違いだ」と簡単に片付けられないものを感じます。なぜなら、子どもたちに対して「あの子は、いい子。しかし、あいつはだめや。できないな。」と、これまでに頭をよぎったことはないでしょうか。私たちは皆、「人間は、一人一人大切な存在であり、排除されたり差別されたりしない存在」と認識しています。しかし、先のようなことが頭をよぎったなら、ほんのわずかでも容疑者が自分の中にすんでいるのではないだろうか。そう思うと恐ろしくて、この事件は他人事ではなくなります。
 

かつて、「初めて自分で自分を褒めたいと思います。」と述べたアスリートの言葉を思い出しながら、この蛮行を否定するためにも、自分の見方・考え方を検証する機会にしたいものです。

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