人権エッセイ集

2019年度 あいどるとおく

3月号「さいぼし」

先日、学校で子どもたちが次のような話をしていました。
「昨日の晩ご飯、さいぼしやってん。」
「おれの家も週1回はさいぼし出るで。」
「おれ、さいぼしめっちゃ好きやねん。」
 

詳しく聞いてみると、どうやらこの子たちの家には毎週1回、おばあさんがふろしきにさいぼしを包んで売りに来るそうです。
 

ところで、さいぼしは、馬肉を燻製にしたもので、とっても美味しい食べ物です。そういえば、自分が小学生のころにもさいぼしを売りにくるおばあさんがいたなと思いました。でも、いつの間にか来なくなりました。
 

ふと“ムラ”の食べ物にどんなものがあるか考えてみました。例えば、あぶらかす。自分の家のお好み焼きには必ず入っていました。先日、先輩の家で食べたたこ焼きの中にもあぶらかすが入っていました。また、最近はあぶらかすの入ったかすうどんが度々テレビで紹介されています。
 

以前は、さいぼしやあぶらかす、ホルモンなどは“ムラ”以外では手に入りにくいものでした。ところが、今はどうでしょうか。さいぼしは、宅配食材の広告にも掲載され、販売されています。また、あぶらかすやホルモンもスーパーなどで当たり前に販売されています。このように“ムラ”の食文化は、「うまいもの」として世間に広まってきています。
 

『奈良県部落差別の解消の推進に関する条例』が公布されてまもなく1年が経ちます。“ムラ”の食文化は広まっているのに、部落差別は残ったままです。この条例も食文化のように広まり、根づいてくれれば・・・。
                   

(※“ムラ”とは、被差別部落のことを表しています)

目次