人権エッセイ集

2020年度 あいどるとおく

3月号「子どもをつなぐ」

私たちは、「子どもどうしがつながってほしい」と思いをもって、日々の教育活動を行っています。では、「子どもをつなぐ」とは、どういうことでしょうか。このことについて考えるきっかけを子どもたちにもらったので、ご紹介したいと思います。

ある学級での一場面です。子どもたちは、となりの席の友だちと相談しあいながら、課題に取り組んでいました。なかでも、ひときわ素敵に映った二人の子どもがいたので、しばらくその二人の様子を見ていました。わからず困っている様子のAさんに、Bさんが肩をよせて、一生懸命に説明していました。Aさんも、真剣にBさんの声に耳を傾けていて、「ありがた迷惑」ではない素敵な寄り添い方でした。

そのまま見ていると、支援をされていた先生がすっとAさんのそばに座り、Aさんに話しかけました。その瞬間です。Bさんはさっと身を引き、自分の机で学習を始めました。見ていて「はっ」とする出来事でした。なぜ、Bさんは身を引いてしまったのでしょうか。本当は自分一人で学習したかったのでしょうか。それとも、先生が来たので先生に任せたほうが良いと思ったのでしょうか。理由はなんにせよ、授業のなかで子どもどうしがつながって学び合う姿を分断させてしまったことは確かなように感じました。それまで、子どもが困った様子を見せたらすぐにかけつけたり、子どもと子どもの間に座って支援をしたりすることがあった私は、「よかれと思って子どもに声をかけたことが、結果的に子どもたちを引き離してしまう、そんな支援をしてはいないか」と反省させられました。
 

困っている子どもに対して、私たちが寄り添うことはもちろん大切ですし、それは私たちの責務とも言えます。だからこそ、時には子どもどうしが力を合わせられるように距離をとって見守ってみたり、私たちが教えるだけではなく隣の子に訊いてみるように促してみたりすることで、「子どもをつなぐ」関わりができるのではないでしょうか。

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