人権エッセイ集

2000年度 などちゃんのアイドルトーク 01

11月号「防波堤と穀然とした態度」

「子どもを理解するには、教師の態度はゆっくりと待つ姿勢がないといけない」
「しつけをするときは、親や教師が自分自身の姿勢をまず正しくし、それを絶対に守るべきこととして、子どもに示さなければならない。大人の生きている厳しい姿勢が子どもに対するモデルになるのだ」
「しつけを守らない子どもに対しては、それはけっして許されないという厳しい態度と、それを守れない子どもの心はどうなっているのかを理解しようとする態度と、一見両立しがたいことを両立させてこそ教師である」
「思春期の子どもには、彼らを守る何らかの『防波堤』が必要である」

河合隼雄さんは、このように述べられています。

首相の私的諮問機関である教育改革国民会議の「中間報告」には、「問題を起こす子どもへの教育をあいまいにしない」とした上で、「問題を起こす子ども以外の子どもたちの教育環境を守る」と述べられています。これを受けて、早くも文部省は「出席停止処分」を強化するための学校教育法の改正を検討しています。

「ちょっと待ってくれよ」と思いました。

戦後、同和教育は、家計を支えるために働く子どもたちが学校に通えるよう、保護者との粘り強い話し合いや条件整備をしながら、真摯に取り組んできました。当時、「そのような子どもが、学校にきたら困るではないか」といった差別的な雰囲気がまわりにある中での取り組みでした。

長期欠席・不就学問題は、そうした取り組みの積み上げがあって、解消することができました。

ところが、こうした同和教育の取り組みを知ってか知らずか、教育改革国民会議や文部省は、問題を起こす子どもに対して、一時避難とはいえ、出席停止処分を次々と行えるようにするというのです。

ほんと、「ちょっと待ってくれよ」です。そうしたことで、問題が解決するとは、とても思えません。

今求められているのは、「問題」を起こす子どもを隔離する「防波堤」になることではなく、「問題行動」や「荒れ」を示す子どもたちの心を理解し、子ども自身の内界の荒波から守る「防波堤」になるということです。そして、「毅然とした態度」は、子どもたちを「問題行動」に走らせるものに対してとりたいものです。

河合さんの言葉を、

肝に銘じて‥‥。

目次