人権エッセイ集

2005年度 アイドルトーク 02

10月号「スタンドプレー」

まだ緑色が残る稲穂の間のあぜ道に、今年も真っ赤な彼岸花が咲きました。鮮やかな夏の花がほぼ咲き終わり、木々の紅葉にはまだ間があるこの時期に咲く真紅の花はめだちます。しかも、葉はなく花茎だけが伸び突然に咲くのですから、これはもうスタンドプレーです。

調べてみると、地面の中にしっかりとした球根があることがわかります。ここに十分な栄養があるので、葉を出さなくてもみごとな花を咲かすことができるのです。さらに驚くのは、その球根に栄養をためる方法です。花が1週間から10日で枯れたあと、今度はかわって葉がのびてきます。この葉は緑のままで冬を越すのです。周りの植物が葉を落としている間に陽の光を独り占めにし、次の春までせっせと光合成をして、地下の球根に栄養をため込んでいくのです。そして、周囲の植物たちが、春先に芽を出し、夏にかけて光の奪い合いを始めるころには、葉を枯らし、夏の休眠に入り、じっと開花の時を待つのです。

このように、彼岸花は色や咲く時期だけでなく、「生活スタイル」そのものが、スタンドプレーともいえるのです。

ところで、学校での「いじめ」の発生件数が’03年度は全国で2万3351件となり、8年ぶりに増加したことが文部科学省の調べで明らかになっています。いじめる側は、体が小さいとか大きいとか、おしゃべりだとか無口だとか、勉強ができるとかできないとか、とにかく周りと「ちがう」ことを理由にしていじめます。集団の中に「いじめ」があると、自分が「いじめ」の対象にならないよう、できるだけめだたず、なかまと同調することが求められます。まさに、スタンドプレー=めだつことを許さない集団となってしまいます。

彼岸花のことを韓国では「花は葉を思い、葉は花を思う」という意味で「サンチョ(相思華)」というそうです。葉の時期と花の時期を完全に分離したほかの植物とは「ちがう」彼岸花の生き方を、スタンドプレーとはとらえず、それぞれの生き方として認めるおおらかさと優しさを私たちも持ちたいものです。そしてなによりも、ときどきは野の花に目を向ける時間を大切にしたいと思います。

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